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阪神圏大学非常勤講師労働組合

 

 ニュース第10号 2003年1月8日発行

 

  組合事務所:〒564-0027 吹田市朝日町2-925 福田方

         阪神圏大学非常勤講師労働組合

 TEL/FAX:0774-98-0582(長澤)または0726-95-8031(江尻)

 E-mail:ngswtkk@kinet-tv.ne.jp(長澤)a-ejiri@orchid.plala.or.jp(江尻)

ホームページ:http://homepage3.nifty.com/hansin-hijokin/

振込先口座番号:00900−8−147395 阪神圏大学非常勤講師労働組合

参加資格:阪神圏の国公私立大学・短大・専門学校で非常勤講師として勤務している方ならどなたでも入れます。本務校をお持ちの方でも結構です。国籍は問いません。

組合費:年収にかかわらず年4000円です。

 

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  第2回 文部科学省・厚生労働省陳情を実施

 昨年9月19日、参議院議員会館で、大学の非常勤講師を組織する4労働組合(首都圏組合、京滋組合、阪神圏組合、UTU組合)は、2月に次いで2回目の文部科学省、厚生労働省陳情を行いました。陳情には民主党、共産党、社民党、自由党の議員及び議員秘書も14名参加しました。4組合は両省に対し、統一要求(2〜3ページ参照)をつくり陳情に臨みました。文部科学省側から2名、厚生労働省側から6名出席しました。

 文科省との陳情では時間の制約(30分)もあったため、@全国の大学非常勤講師の実態調査の早期実施 A私学助成金における非常勤講師への補助金の増額(現行、専任300万円、非常勤講師8万円)の2項目を要求しました。@については4月の国会で遠山大臣が調査実施の答弁をしていましたが、交渉では、これを後退させ調査は国公立大学に限定し、私立大学については実施は考えていないと回答しました。非常勤講師への依存度が高い私立大学での実態調査が重要なのにこれを拒否しました。文部科学省は私立大学の非常勤講師の労働条件は厚生労働省の管轄で、私大には一般に労働法制を守っていくよう勧告するしかできないと責任を回避した回答をしました。国会議員からも「実態がわからなければことが進まない。私立大学についても調査して欲しい」との発言がありました。この問題については、引き続き私大も含めた全国調査を要求すると同時に組合としても独自で調査の実施を予定しています。Aの助成金制度の改正については「後ろ向きでない」検討をすると回答し、少し前進したように思えます。

 厚生労働省との陳情では、「コマ切れ・掛け持ち」型パート労働者である非常勤講師は現行法でも社会保険の合算規定の対象者に該当しているので各大学が保険料負担を按分し、加入できるよう要求しました。これに対し、厚生労働省は合算規定は「常用雇用者のおおむね4分の3以上」という基準を2ヶ所の事業所で満たしている者についての規定で、合算すれば加入資格が生ずる場合に合算してもよいというものではないと回答しました。それに対し組合側からは、社会保険庁の『誰にも分かる社会保険の手引き』の中で合算できる例として「複数事業所に雇われている特殊技能者」をあげているが大学の非常勤講師は、この「特殊技能者」にあてはまり、この規定を適用して欲しいと要望しました。また、雇用保険の加入については、労働時間が合算して週20時間を越えていれば加入できるとの確認を得ました。

<資料> 文部科学省への要請書

文部科学大臣

遠山 敦子殿

             要請書

首都圏大学非常勤講師組合     京滋地区私立大学非常勤講師組合

阪神圏大学非常勤講師労働組合   全国一般労働組合東京南部大学教員支部

本年2月の陳情交渉において私たちは、わが国の高等教育機関における不安定雇用教員(「コマ切れ・掛け持ち」型パート労働者の典型である専業的非常勤講師、および外国人教員)の実情を訴え、劣悪な処遇の改善に資する施策を求めました。

 その後この問題は、4月2日に林紀子議員が参議院・文教科学委員会で、7月22日に金子哲夫議員が衆議院・決算行政監視委員会で、それぞれ質問して取り上げました。前者における質問と答弁においては、不安定雇用教員の実態が殆ど把握されていないことが判明しました。後者における質問と答弁においては、厚生年金などの社会保険の合算規定が問題点であること等が判明しました。二つの質問に対する答弁は、不安定教員を適切に遇し、もって高等教育を改善・発展させようという政府の気概も展望も感じられず、大いに失望したと言わざるを得ません。加えて、厚生労働省パートタイム労働研究会最終報告「パート労働の課題と対応の方向性」においては、改善方向は一定示されているとはいえ、「同一(価値)労働同一賃金」の考えに立脚した労働時間による差別的な取り扱い禁止の立法化の方向が目指されておらず、不満の残るものとなっています。

 そこで改めて、専業的大学非常勤講師と外国人教員に注目して、均等処遇を効果的に推進し、もってわが国の高等教育の充実をはかる観点から、以下の点をご検討いただきたく、要請するものです。

 

(1)遠山文部科学大臣は参議院・文教科学委員会で「今後必要に応じて調査していきたい」と答弁しました。そこで、全国的な実態調査を継続的に実施し、処遇の継続的改善に結びつけることを要請します。当面、来年度に最初の実態調査を実施することを要請します。調査項目には以下を盛り込むことを、ご検討下さい。

@非常勤講師等(本務別)への依存(人数、コマ数)の実態

A非常勤講師等の労働条件(賃金、夏季・冬季の一時金、退職金、交通費、私学共済・健康保険・雇用保険・健康診断など福利厚生制度、労災保険、パート労働法遵守状況、等々)の実態

B非常勤講師等の研究・教育条件(控室、研究室、研究費、教材費・コピー費、PCなど各種機器類・図書館などの利用状況、その他)の実態

C専業非常勤講師・外国人教員(任期付き)の生活実態

D教員(専任及び非常勤)任用における女性・外国人等への差別の実態、外国人教員制度の運用実態

(2)語学教育を中心に外国人教員の任用が進んできていますが、任期付き雇用が中心で、報酬その他の処遇面でも、正規の専任教員に著しく劣る場合が目立ちます。そこで、上の調査においては、この点も配慮するとともに、直ちに任期の定めを外すなど外国人差別を是正する施策に着手することを要請します。

(3)不安定雇用教員の処遇を改善するため、私学助成における経常的経費の費目充実と助成額アップ(私立大学等経常費補助金取扱要領などの改善)に直ちに着手することを要請します。

(4)非常勤講師等とりわけ専業的非常勤講師に対して、独自の枠を設けるなど、科学研究費申請の門戸を大幅に拡大することを要請します。

(5)「コマ切れ・掛け持ち」型パート労働者である専業的非常勤講師は、社会保険の現行諸法でも、合算規定の対象者に該当すると思われます。

 年金および健康保険については、厚生年金法第二十四条第二項に複数事業所勤務者の給与合算により標準報酬を算出することが、同施行令第四条に各事業主への保険料負担の案分が規定され、健康保険法第三条9項に複数事業所勤務者の給与合算により標準報酬を算出することが規定されています。また、労働省法規課『口語労働法』は、「事業場を異にする場合、たとえ使用者が違っていても労働時間を通算する。学生アルバイトやパートタイム労働者が1日に2つの事業場を掛け持つ場合に、もとより適用がある」と解説しています(労働基準法第38条)。関連して、社会保険庁のパンフレットには、特殊技能を持っている人が合算規定対象者として記載されています。

 以上については実例もあり、例えば東京都立の学校では、非常勤講師(殆どが複数校の掛け持ち)が通算週20時間以上勤務しており、雇用保険に加入しています。日雇い労働者や季節労働者の雇用保険の場合、使用者が違っていても複数事業所・使用者のもとでの労働日数が通算されています。

 社会保険諸法においては、もともと合算ないし通算は規定されていると思われますので、これら規定の遵守を指導することを要請します。もし、非常勤講師等がそれに該当しない理由があるとすれば、それは何か、明示することを求めます。加えて、いわゆる4分の3の要件(旧厚生省1980年内簡)の法的根拠と効力を明示することを求めます。

(6)適切な部局・審議会・研究会などにおいて、不安定雇用教員にも配慮する方向で、処遇改善に資する施策を検討・実施することを要請します。

(7)ILO「パートタイム労働条約」(175号、1994年採択)、ユネスコ勧告「高等教育の教育職員の地位に関する勧告」(1997年総会採択)については、採択から既に久しく、わが国の制度・法律・政策に迅速に具体化することを要請します。

以上

 

神戸市立外国語大学との団体交渉(2002.9)について

昨年12月の団体交渉において、「2002年度のコマ数減および雇い止めに関して当事者にその理由を説明する」という約束がなされたにもかかわらず、それが果たされておらず、さらにまた2002年春になって英米学科の非常勤講師の雇い止めが新たに発生していたことが明らかになったため、9月に、団体交渉を申し込みました。

神戸市外大からは庶務参事ほか4名、組合からは執行委員長・書記長ほか3名が出席しました。

英米学科長もしくは代理の出席を求めていたにもかかわらず、「対外的な話し合いは事務局が対応する」という理由で教学の責任者は一人も出席しませんでした。当方は「非常勤問題を対外的な話し合いと位置付けること自体がおかしい。これでは教学に関する交渉ができない。また組合の意向が専任教員に伝わっているかどうかも確認できない」と抗議したうえで、事務方が回答できる項目に絞って話し合いをはじめようということになりました。

【雇用契約書について】

組合 雇用契約書をなぜ作成しないのか。非常勤の地位の保障のみならず、非常勤の職務内容についてもあいまいである。大学から「職務に反している」といわれても契約書がないのだからこちらも困る。

大学 市役所法規係と相談したが、こういうのは市全体としても委嘱状で対応している。委嘱状と「お知らせ」(説明文書)をセットでお渡ししている。平成16年に独立法人になれば、雇用契約書になる可能性もあるだろう。

組合 業務内容について法的に争う時にはどうするのか。「お知らせ」に反する行為をした場合どうなるのか。大学側に過失が生じた場合どうなるのか。(返答なし)

契約書を作成できないのなら、過渡的形態として、業務内容についての説明会を開いてほしい。今までも、非常勤側と大学側との間で、業務内容についての認識に齟齬が生じた場合があった。信頼関係を相互に築く手立てが必要だ。雇い止めの場合でも、当人に説明する必要がある。

大学 雇い止めの場合、当人に説明することとする。

組合 国公立では給与制ではなく、コマ数ごとに賃金が支払われているが、法的根拠は何か?

大学 いま、わからない。独立法人化によって何らかの方向性(給与制になること)が出ることもあるだろう。非常勤の賃金は報酬費という項目で支払われているが、専任の給与・研究費も含めて、いま大幅にカットしろと市から言われている(税収不足が理由)。

組合 優先順位を考えるべきだ。教育関係を後回しにする考えは?

大学 財政再建団体になれば大学の存続すら困難になる。優先順位を考えている余裕は市にはない。大学としては今年の夏に市側とわたりあったがだめだった。

【教育問題について】

組合 来年度について、当局はコマ数を減らすといってきているが、中身がわからない。どういう基準で減らすのか。また、カリキュラムを見直しているというがその内容が非常勤にはわからない。カリキュラム変更の場合、専任が自分の専門分野を守ろうとするから不自然な編成になる場合がある。学生のニーズに答えられるカリキュラムにせよ。専任と非常勤の合同会議(談話会)はここ10年ほどないので、再開を求める。

英米語学科は一クラス40名だが、このような多人数のクラスを作る根拠は何か。適正規模が基準にならないのでは、人材育成機関としても心もとない。

大学 昔からそうなっている。中国語、ロシア語、イスパニア語も一クラスの人数は同じ。

ネックは財政問題だ。

組合 クラス数が減らされる場合、非常勤講師に「止めてもよいか、止めたくないか」と聞く、できれば本務校を持っている人から止めていただくというような働きかけをしてほしい。

(返答なし)

組合 市の財政が苦しいのはわかるが、専任はこの問題について市に意見しているのか。こういう場に専任が出てきて説明しないということも恥ずかしいことだ。

カリキュラム見直しに際し、一クラスの適正規模の話は出ているのか。

大学 その話は出ていない。経費をどう削減するかという話だ。少人数にせよという話は専任から聞いてはいるが。

【K先生雇い止め問題について】

組合 K先生の雇い止めの決定プロセスを説明せよ。

大学 学生からの成績照会に対して、学生に納得のいく説明がなされなかったので、お止めいただいた。

組合 成績照会にK先生は答えているがその内容が当局の期待するものになっていないということか。どこまで詳細に答えなければならないのかガイドラインを明確にすべきだ。

大学 学生が納得するように答えていただきたい。

組合 今回K先生との連絡が取りにくかったため、照会期限が過ぎてしまった。これが雇い止めの理由であると聞いているが、これが理由に値するのか。

大学 回答期限が過ぎたことを問題にしているのではない。こちらからの連絡に応じてもらえなかった。電話もなかった。成績照会になかなか答えてもらえなかったことが問題なのだ。

組合 その後成績照会には回答している。3月12日付けで大学側は「先生の回答を拝見した」と返事している。そして、「この回答では不十分だ」とはどこにも書いてない。(返答なし)

また、新学期の一ヶ月前を過ぎてから雇い止め通知を出すのは労基法違反でもある。前回、これについては文書で「見解の相違」と返事をいただいたが、どういう相違か。(返答なし)

そもそもK先生が大学に不信感を持ったのは、前回の交渉の時に組合が「コマ数が減った人には、個々人にその理由を説明してください」といったにもかかわらず、大学側がそれをしなかったから。また大学側はその後「個々人に理由を説明する必要はないと、組合員がいった」ともいっているが、事実に反する。(長い沈黙。返答なし)

最後に、「何をやるにしても専任と非常勤のコンセンサスが必要。そういう場を設けていただきたいし(財政の負担もなくて済む)、本日のような場に専任が出てこられるまで交渉要求を続ける。本日の内容を専任に伝えてほしい。」と述べるとともに、「本日の内容は後日文書で確認する」と確約して交渉は終わりました。(文責 書記長・長澤)

 

 

すべての大学関係者の皆様へ            2003年1月8日

      冬期カンパのお願い

                  阪神圏大学非常勤講師労働組合

                      執行委員長 江尻 彰

 

 日頃より皆様のご声援とご協力、ありがとうございます。

 阪神圏大学非常勤講師労働組合は結成され、まもなく4年になろうとしています。結成時以来、皆様の協力のなかで何とか今日までがんばって来ました。成果は、かならずしも十分なものとは言えませんが、各大学との交渉をすすめるなか、非常勤講師組合の存在が大学当局に少しずつ認知されてきたと思います。今後、大学の雇用の多様化や不安定化が進むなかで非常勤講師の組合運動の役割はいっそう高まってくると思います。しかし、まだ大学非常勤組合への結集力は弱く、皆様方の協力に支えられて初めて成果を獲得できると考えています。組合活動の意義をご理解いただき、この度の冬期カンパにご協力を是非お願いします。

 この間、大学との交渉を積み重ねるなかで、大学教育のなかで非常勤講師の占める比重の大きさが明らかになってきました。大手私立大学のほとんどで、非常勤講師の数は、専任の2倍近くおり、コマ数でも3〜5割を占めるに至っています。大学が安上がりのために専任を減らし、非常勤講師で対応しようとしているのは大問題です。この背景には非常勤講師があまりにも劣悪な労働条件があり、これを大学当局が大いに利用していると思われます。実際、非常勤講師の給与だけで生活している「専業的非常勤」は、週に10数コマを持たないと最低生活すら難しい状況におかれています。非常勤の待遇を改善しなければ、今後も専任を減らし非常勤に依存する状況は改善されないと思います。

 昨年は首都圏非常勤講師組合、京滋非常勤組合とともに文部科学省、厚生労働省との交渉を2回にわたっておこないました。この交渉には野党各党も参加しました。われわれ組合の当面の要求として@全国の非常勤講師の実態調査の実施A非常勤講師への助成の引き上げB私学共済の加入などを要求しました。また国会でも、共産党や社民党の議員がこの問題をとりあげ追求しました。今後も引き続き、中央交渉を予定しています。さらに組合としても独自に先の3組合が合同で大学の非常勤講師の実態調査を実施しています。これらの組合活動をすすめるうえで、現在の組合財政はたいへん厳しい状況にあります。是非、カンパの協力をよろしくお願いします。

 なおカンパは振り替え用紙をご利用ください(口座番号:00900-8-147395)

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