2001年度近畿大学との団交結果について

去る9月7日、近畿大学において当組合との団交がもたれた。近畿大学からの出席者は清水総務部長以下5名、当組合からは江尻委員長以下4名の執行委員と大私教事務局次長の紅露氏および専任教員組合の近藤先生の計6名であった。

近畿大学に対してあらかじめ提出しておいた要求項目に沿って回答していただいた。

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最初に江尻委員長が「近畿大学における非常勤講師の現状について説明してほしい」と発言。回答は「専任の不足分を非常勤の先生方にお願いしている。一人平均、2.8コマ担当してもらっており、平均出講日数は1.2日である。平均在職期間は5.3年。専任との担当コマ数比率は、専任68%:非常勤32%である。」というものであった。

これを受けて再び江尻委員長のほうから「非常勤講師が教育を担っている割合が3割もある以上、大学教育上の位置付けを明らかにすべきであるということを前提にして、以下の項目に回答して欲しい」と注文をつけた。

 

1 雇用契約書を作成し、労働条件を明示すること。

回答「教務案内に『非常勤講師の就業に関する規定』と『非常勤講師の給与について』を載せている。現在、辞令で委嘱しているが、これが契約書に代わるものである。」

組合「この『就業に関する規定』には産休・育休・一時金・退職金等について書かれていない。そういうことまでちゃんと書いて、労基法に基づいて雇用契約書を作成すべきである。」

*話し合いの結果、契約書を作成するつもりはないが、産休などのことも『就業に関する規定』に書くことを検討するということになった。

(組合注:この『就業に関する規定』は、大学側の一方的な・管理用の規定であって正式の「就業規則」ではありません。個々人の非常勤講師の労働条件をすべて記載した雇用契約書を交わすことで、従来のような不透明な人事を幾分なりとも透明にできるはずです。)

 

2 非常勤講師の雇用継続に最大限の努力をすること。もし、やむを得ず雇い止めせざるを得ない場合には、なるべく早い時期に(10月ごろ)その理由を説明すること。その際、誰がどのような手続きによって判断したのかということを明確にすること。

この件に関し、非常勤講師にも解雇法理を適用すること。

回答「雇い止めもしくはコマ数減ということになれば、なるべく早く知らせることは当然のことである」

*これとの関連で、昨年の12月に理工学部で起きた『情報処理基礎・実習』担当非常勤講師(8名)の雇い止めについて以下のようなやり取りがあった。

組合「12月に非常勤講師に送付された文書は、『お願い』と書いてあるが、その内容はお願いなどではなく『雇い止め決定通知』である。事前に担当者に何の説明も無いというのはどういうことでしょう。」

総務部長「私もあれを読んだときは、どうかなと思ったので、学部のほうに通告しておきました。あのようなやり方は特異な例です。というのはカリキュラム編成について急ぎすぎている感があるのでああいう事になったのだと思う。だからあのやり方は今後の前例とはしません。」

 またこちらが「非常勤を雇い止めする場合は『整理解雇4要件』を遵守すべきだ。万が一にも専任教員の個人的な判断で雇い止めすることなどあってはならないことだ。」というと「おっしゃるとおりです」という回答であった。

(組合注:残念ながら担当を元にもどすということはできませんでしたが、今後は不透明な人事を許さない闘いをする予定です。また、私たちにはよくわからない教授会と総務部長の権限関係を今後は明確に説明してもらった上で交渉事項を絞り込んでいきたいと思います。)

 

3 非常勤講師給の各ランクについて、大幅にアップすること。あるいはランクそのものを無くし、1コマあたり5万円に引き上げること。

回答「近畿大学の単価は他大学と比べて決して低くは無い。1コマ○○円の根拠はなにかと聞かれても、特に根拠というようなものは無い。他大学と比較しながら決めている。また、教務案内に明記していないが、平成2年から、本務校の無い非常勤講師は5年ごとにランクが上がるようになっている。今後は明記したい。」

その他、「はじめて近大から委嘱された場合、他大学での教育暦はカウントされるのか」については「わからない」。「ランクそのものをなくすことについて」は「考えていない」という回答であった。

*この項目については、非常勤講師の役割を正当に評価し、単価について非常勤講師が納得できる評価基準を(授業評価という方法も含めて)導入することを要求して、次の項目に移ったが、非常勤講師の果たしている役割に比して単価が安いということは納得していただけたと思う。

 

4 一時金を支給すること。

 回答「考えていない。本務校のある先生方には出す必要は無い。といって、本務校の無い先生にだけ出すというのもどうかと思う」

 組合「本務校のある無しで区別しても問題は無いと思う。」

 回答「ご意見は伺っておく」

(組合注:一時金を出している大学は以下のとおり。大阪成蹊女子=年間2ヶ月。大阪電通大=夏期と年末に一ヶ月分づつ。阪南大=前期と後期に0.4か月分づつ。高野山大=一ヶ月分。)

 

5 退職金制度を設けること。

 回答「考えていない。これは日本全体の考え方をまず変えないと無理だろう」

(組合注:つまり他大学が実行すれば近大も実行するかも、ということ。関西の他大学で退

職金制度のあるところはありません)

 

6 教育研究費を支給すること。

 回答「図書館利用や教材のコピーなど、便宜をはかっている。LLのダビングもOK。それ以外にはない」

(組合注:教育研究費についての概念が当組合とは違うのですが、時間の関係で詳細な話ができませんでした。当組合のいう教育研究費とは、良い講義をするために必要不可欠な日々の研究・教育にかかる費用のことです。図書購入費や学会旅費、また図書館での個人用コピーにかかる費用のことです。)

 

7 開講予定科目が不開講になった場合、契約講師料の60%を支払うこと。

 回答「2か月分、支給している。」

組合「それは労基法26条違反です。」

回答「検討してみる。」

 

8 私学共済・雇用保険に加入させること。

 回答「考えていない。複数の大学を掛け持ちしている先生方が多いし、按分システムがない。」

 組合「私学共済側は、各大学が手続きさえしてくれれば入れるといっている。現に大阪電通大は5コマ以上の非常勤講師を加入させている。雇用保険についても、専任は解雇が無いという理由で雇用保険には入ってないが、それなら雇い止めの危険がある非常勤講師は入れるはずである。大学は社会的責任を果たすべきだ。」

回答「御伺いしておきます」

(組合注:私たちは国民年金と国保に加入していますが、30歳から60歳までの掛け金をマイナスとし、戻ってくる分をプラスとして計算すると、10コマ担当している人が私学共済と雇用保険に加入している場合と比較して−80歳まで生きたとして−約1900万円の「損」になるという試算もあります。97年のデータです)

 

9 健康診断を実施すること。

 回答「申込みがあればOK。掲示板で知らせている。毎年、何十人かがうけているはず。」

 組合「知らない非常勤もいるはず。とりあえず『就業に関する規定』に明記した上で、やがては雇用契約書に明記すべきである」

 

10 労働条件の変更にあたって、事前に組合と協議し、同意を得てから実施すること。とくに労基法90条、パート労働法7条に従い、近畿大学に勤務する非常勤講師の過半数を代表する者の意見を聞くこと。

  回答「非常勤の労働条件については教員組合と話し合っている。」

組合「非常勤の不利益になると判断されるような変更についてはとりわけこの条文を遵守すべきである」

回答なし。

(組合注:この件についてはまだどこの大学もやっていないし、おそらくこの条文すら知らなかったのだろうと思います。非常勤講師の条件を変更するのですから、教員組合とではなく非常勤講師の代表と交渉しなければなりません。この条文については、京滋の非常勤組合の学習会で労働法の専門家や弁護士さんから教えていただきました。これもまた武器にしていこうと思います) 

 その他

「組合ニュースを非常勤講師控え室の個人BOXに配布することは差し支えないですね」

⇒ 「検討する」

「学部長と話しあわないことには解決しないような問題については、大学を通じて面談できるようにせよ」

⇒ 回答なし。

(組合注:学部長との面談については、上記の2のような問題と密接にかかわっているので、今後この要求を出しつづける予定です)

 

最後に組合のほうから「次回の団交時には、一つでもいいから前進した回答を準備してきてください」と注文をつけて団交を終了しました。

                          以上   (文責:書記長 長澤)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

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