関西大学との交渉2002//13)

関西大学では来年度から「非常勤講師雇用規程」に基づき「非常勤講師雇用契約書」を取り交わすことになりました。雇用契約書を作成したことは一歩前進ですが、その内容および作成手続きには不明瞭な点が多々あります。

そこでその点を問いただすべく関西大学と交渉しました。大学側からは総務局長・事務局長・人事課長等5名、当組合からは江尻委員長・長澤書記長・福田執行委員の3名が出席し、約2時間にわたって話し合いがもたれました。

 

要求項目1  雇用規程について

組合 職員の場合は普通「就業規則」というが、「雇用規程」という表現に何か別の意味があるのか。

大学 ない。「雇用規程」も労基法に基づいて作成してある。

組合 4条2(雇用契約は、前項に定める雇用期間満了によって当然に終了するものとする)について、その意味するところ(具体的な運用方法)を説明して欲しい。

大学 基本的にはよほどの理由がない限り雇い止めはないので、形式的なものである。雇い止めの場合は理由があるのだから、本人に理由を明示するのは当然である。

組合 5条(非常勤講師の雇用契約は、当該者と学校法人関西大学との間で、別に定める所定の契約書によって行う)について。もし契約書を提出しなかったらどうなるのか。

大学 この形式で行なうのは今年が初めてなので、提出がなかった場合でも、労働法によれば従来の形での労働契約は成立しているとのことなので、辞令は交付する形になる。ただ、未提出者を今後どういうように取り扱うかは未定。ほとんどの方が提出する場合とほとんどの方が提出しない場合とで、また考え直さないといけない場合が出てくるかもしれないが、厚生労働省からの指導もあるので、契約書方式で始めてみることにした。今回の契約書で始めてみて、内容は改善していく予定である。

組合 6条(不開講科目に対する「給与規程9条の適用」)を具体的に説明して欲しい。

大学 これは一か月分の給与を支払うという意味。このようなことは大学院でよく起こることであって(何十科目ではきかないほど)、学部では予測を立てて専任で調整するのでほとんど問題はない。労基法にいう「60%支給」はしない。

組合 7条2(前期または後期の場合は1ヶ月、通年の場合は3ヶ月を超えて授業を行なうことができないとき、即時に雇用契約を解約する)についてその根拠を説明して欲しい。

大学 「1ヶ月を超えて」というのは、1ヶ月以内だと補講可能という理由から設定してある。「3ヶ月を超えて」という場合は、夏休みは除外してカウントする。

組合 7条3(本学の信用を傷つけ又は著しく名誉を汚す行為があったとき)を具体的に述べて欲しい。

大学 例として「セクハラ」があげられる。訴えのあったときは調査委員会が調査し、処分を決定する。ルールは確立している。また学生の人格を傷つける言動についても7条3に該当する。

組合 関大の不正を告発した人を処分することは?

大学 そのようなことは社会的に認められるはずがないと認識している。処分することはない。

組合 7条4(勤務成績、能力、技能等が著しく不良のとき又は教育に従事するものとしてふさわしくない行為があったとき)を具体的に述べて欲しい。

大学 勤務成績不良というのは、無断欠勤をした時とか欠勤が多いということを指す。ただ何割欠勤すると、この条項に引っかかるという規程はない。常識で判断するということである。休講すれば補講するというのが原則である。

組合 10条(年次有給休暇の使用に際しては、・・・夏季休業、冬季休業または春季休業の間に使用するよう努めなければならない)は、実質的に有給休暇はないということか。

大学 労基法は非常勤講師になじまないところが多々あるが、これはその典型。労基法上この項目が必要なので入れているが、これは「夏休みであっても出てきて補講せよ、とはいいません」という意味に解して欲しい。

組合 産休・育休をとっても、それを来年度の雇い止めの理由とはしないという文言が欲しい。

大学 非常勤をたのんでいる仕組みからして(任意の専任が窓口になって、非常勤講師を個人的に探してきているということ)、その要求を制度とすることは難しい。1年間休む時は、実際問題としては専任にオーバータイムで授業を持ってもらうことになるだろう。それができない時は、代わりの非常勤の先生に一年間のみという約束で担当してもらうことになるだろうが、それで了承していただけるかどうか心配なので(いろいろなことを言う人がいるので)、制度としてはなじまないということだ。

*組合注 産休については労基法に産休を雇い止めの理由にしないとの文言がある。京産大・同志社・竜谷大・立命館はこの規程を遵守することを明言している。 

組合 11条(給与規程)について。給与規程自体を変えて、額をUPすべき時だ。

大学 今のところUPする考えはないが、D級を適用されている人はいない。C級まででやっている。勤続年数によって昇給しているが、明文化していない。

組合 12条(非常勤講師の社会保険への加入については、本法人はその責に任じない)は私学共済のことだろうが、文部科学省は「私学共済に入れないということはない」といっているが。

大学 これは「現時点では」ということであって、いま文部科学省と厚生労働省と話し合いをしている。国の政策がはっきりすれば関大もそれに従う。

雇用契約を結ぶということについては、各非常勤講師に事前説明をしてきた。また語学関係の教員については懇談会を開くので、質問があれば説明する。

要求項目2 雇用規程作成手続きについて

組合 非常勤講師に関わる雇用規程を新しく作成したり重大な変更を加えたりする場合は、労基法90条に、「労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない」とあるが、これは非常勤講師を含めた労働者の過半数の意見を聴けということだ。その手続きを踏んでいない。

大学 今回、茨木労基署はいったん雇用規程を受理したものの、労基法に基づく手続き上の瑕疵(教員組合・職員組合・教諭組合の意見を聴き、意見書を添付したが、非常勤講師を含む労働者の過半数を代表する者の意見を聴いていない)があるとして、関西大学に不受理を通告してきた。

関西大学はこの件につき抗議を準備中である。理由は、@いままで行政指導に従ってやってきているのに、今回はなぜ不受理なのか。A労基法90条を遂行するにあたって、その対象となる「職場の構成員」を確定できたとしても、大学が構成員の過半数の意見を聴くのは事実上不可能である、ということ。

組合 個々の非常勤講師がA氏もしくは組合に委任状を託すという方法を大学が講ずれば、大学は構成員の意見を聴くことが出来る。

大学 それは考えていない。

 

【組合のコメント】

今回の交渉で、私たち非常勤講師の意見を無視しては雇用規程すら作成できない状況になってきたということがわかりました。

 まだ組合員になっていないひとも自分の意見・要求を大学側に出すチャンスです。組合員になっていただくのが一番いいのですが、組合員でなくても組合に要求を出していただければ、私たちはそれらを集約して実現すべく努力します。

 

 契約書を提出する際に、不明な点があれば遠慮なく当局に質問しましょう。不条理であると思う点は改善を求めましょう。納得いかなければ提出しなくてもかまいません。労働法によれば、労働契約はすでに大学側から口頭で頼まれた時点で成立しています。

従来の不透明な雇用慣行を止めさせ、より透明性が高く、かつ非常勤講師を保護するための雇用規程を作成させるためにがんばりましょう。

 

 

 

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